黒い車の謎が解けた!

黒い車、それもベンツがやたら増えて続けているのが気になっていた。黒いベンツといえば、私たちの世代でまず思い浮かぶのはその筋の人の車ということだったが、それが堅気の人たちにとっても、ステレオタイプの双六の上がりのようになっているのが正直面白くないなあと思っていた。確かに黒い堅牢なデカイ車というのは葬式の車に似て、「死が最強だよ」ということであれば最後の上がりにふさわしい。俺が一番というのを見せたいソフトヤンキーの人に黒いベンツがお墨付きのアイコンになっているのもわかる気がする。しかしだ。狭い道をママチャリの横を猛スピードで飛ばしていく黒ベンツを見ると「おい、金持ちならせめてランボルギーニに乗れよ!」と、乏しい高級外車キーワードから唯一知っているブランド名をつぶやきたくなる貧乏人ではあった。

しかし、最近思い違いに気づかされた。黒いベンツはどうも本物の金持ちのアイコンではないようなのである。細かい理由は「ベンツ、税金対策」で検索すればすぐ出てくるので言わないが、ベンツ愛用者が、突然降りてきてマシンガンをぶっ放すヤクザさんでもなければ、窓から札束を投げる大金持ちでもない、税金を少しでも逃れようと、せこく腐心する小金持ちの小市民でしかないとしたら残念なことだ。世間から批判されようと、明日のことなど考えない大キリギリス、自分なりの馬鹿馬鹿しい趣味に大いにお金を使って、贅沢三昧をする真のお金持ちよ、快楽主義者よ出でよ、と思う。そうしていただければ、少しは私にも関わりのある職人や画家の生活、そしてほとんどが無駄な消費で成り立っている日本の文化も、間接的に恩恵を受けるのになあ。このままでは日本は黒いベンツと四角いガラスのパネル建築だけの変な社会主義国になっちまうぜ。